あなたの疑問
・重ね継手に必要な長さは?
・重ね継手の長さはどうやって決まるの?
・コンクリート強度や鉄筋の強度で継手長さが変わる?
・径が違う鉄筋の重ね継手の長さは?
こんな疑問を解決できるように解説します。
ここで解説する重ね継ぎ手の長さの基本ポイントを理解することは、
自信を持って鉄筋担当をこなすこと
監理者との配筋検査に対応できること
にもつながります。
重ね継手ののポイントは、
- 重ね継手の必要長さはL1
- コンクリートの強度が大きくなると短くなる
- 鉄筋の強度が大きくなると長くなる
まずは基本的な数値を理解するようにしましょう。
重ね継手が必要な理由
鉄筋の長さには限界があります。
製品としては、いくらでも長い鉄筋を作ることができますが、現場への運搬や工場での取り扱いを考慮するといくらでも長いものを作るというわけにもいきません。
実際に鉄筋の長さは最大12mです。
鉄筋が必要になる建物は、12mより高かったり、大きかったりするので、現場では、12m以上の鉄筋が必要になります。
このように現場で鉄筋の製品長さ以上の長さが必要な場合に使用されるのが「重ね継手」です。
重ね継手の必要長さは?
まず、「鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説第5版 [ 日本建築学会 ]」の該当部分を確認します。
b.重ね継手の長さは設計図書に特記する.
特記のない場合は,柱・梁の主筋以外のその他の鉄筋を対象として,直線重ね継手の長さL1は表6.4(a)の数値以上とし,フック付き重ね継乎の長さL1h,は同表(b)の数値以上とする。
ただし. D35以上の異形鉄筋には,原則として重ね継手は用いない。
直線重ね継手の長さL1
表6.4 鉄筋の重ね継手の長さ
(a)直線重ね継手の長さL1
コンクリートの 設計基準強度 Fc(N/mm2) |
SD295A SD295B |
SD345 | SD390 | SD490 |
---|---|---|---|---|
18 | 45d | 50d | - | - |
21 | 40d | 45d | 50d | - |
24~27 | 35d | 40d | 45d | 55d |
30~36 | 35d | 35d | 40d | 50d |
39~45 | 30d | 35d | 40d | 45d |
48~60 | 30d | 30d | 35d | 40d |
フック付き重ね継手の長さL1h
(b)フック付き重ね継手の長さ L1h
コンクリートの 設計基準強度 Fc(N/mm2) |
SD295A SD295B |
SD345 | SD390 | SD490 |
---|---|---|---|---|
18 | 35d | 35d | - | - |
21 | 30d | 30d | 35dd | - |
24~27 | 25d | 30d | 35d | 40d |
30~36 | 25d | 25d | 30d | 35d |
39~45 | 20d | 25d | 30d | 35d |
48~60 | 20d | 20d | 25d | 30d |
鉄筋の重ね継手の注意点
(2)直径の異なる鉄筋相互の重ね継手の長さは,細い方のdによる.
(3)フック付き重ね継手の長さは,鉄筋相互の折曲げ開始点間の距離とし,折曲げ開始点以降のフック郎は継手長さに含まない.
(4)フックの折曲げ内法直径Dおよび余長は,特記のない場合は表4.1による.
(5)軽量コンクリートを使用する場合の鉄筋の重ね継手の長さは特記による.
特記がない場合は,Fc≦36N/mm2の軽量コンクリートとSD490以外の異形鉄筋を対象として,表6.4の数値に5d以上加算した継手の長さとし,工事監理者の承諾を得ること.
なお,鉄筋の下に300mm以上の軽量コンクリートを打ち込む部材の上端部の重ね継手はフック付きとする.
ここでまず、表を見て覚えておくべきポイントは、
- コンクリートの強度によって重ね継手の必要長さが変わる
- 鉄筋の強度によって重ね継手の必要長さが変わる
ということ。
そして、「この表が少し複雑だな」と思った人は、
L1=40d
400㎜
という数字を覚えておくと便利です。
重ね継ぎ手L1 =40dを覚える
なぜL1=40dという長さを基準として覚えるかというと、
直線重ね継手長さは、40dかつ下記表の継手長さ以上とする。
という特記がある場合があるからです。
a)直線重ね継手の長さL1
コンクリートの 設計基準強度 Fc(N/mm2) |
SD295A SD295B |
SD345 | SD390 | SD490 |
---|---|---|---|---|
18 | 45d | 50d | - | - |
21 | 40d | 45d | 50d | - |
24~27 | 35d | 40d | 45d | 55d |
30~36 | 35d | 35d | 40d | 50d |
39~45 | 30d | 35d | 40d | 45d |
48~60 | 30d | 30d | 35d | 40d |
次に400㎜という数字についてですが、
まず以下の2つのポイントがあります。
躯体のコンクリートはFc=21以上が一般的
重ね継ぎ手を使用するのはD10 ~D16まで、D19 以上はガス圧接が一般的
さらに、建築工事では径によって鉄筋の強度の種類はだいたい決まっています。
- D10~D16:SD295A
- D19~D25:SD345
- D29~D51:SD390
つまり、
直線重ね継手長さは、40dかつ下記表の継手長さ以上とする。
となった場合
Fc21以上で、D10~D16のSD295Aとなると40dが最大となり、
以下のように整理すると400㎜以下になることはないということになります。
- D10 の40d=400㎜
- D13の40d=520㎜
- D16 の40d=640㎜
なので400㎜という数字を覚えていれば、重ね継手の長さが400㎜以下となった場合に
とパッと見ただけで問題に気づくことができます。
ちなみにD35以上は重ね継手を使用できないということもポイントの一つです。
なぜ重ね継手の長さはコンクリート強度と鉄筋の強度によって変わるの?
重ね継ぎ手の強度は、鉄筋の表面積とコンクリートの付着力によって、決まります。
コンクリートの付着力はコンクリートの強度に比例するので、コンクリートの強度が強ければ重ね継手部分の強度も上がり、短い継手でよいということになります。
次に、重ね継手の考え方は1つの鉄筋の応力を、もう一つの鉄筋に適切に伝えるということが必要です。
そのため強度の強い鉄筋を使用した場合、重ね継手を長くして、適切な応力を伝えなければならないということです。
径が違う鉄筋同士の重ね継手は?
あまり現場で多用されうことはありませんが、径の違う鉄筋を重ね継手する場合があります。
その際に必要重ね継手の長さは径の小さい方の長さを基準にするというのが決まりです。
重ね継手の間隔は?
もう一つ重ね継手で重要なポイントがあります。
それは、隣あう重ね継手を同じ位置にしない(いもにしない)といことです。
以下の図を見てください。
隣あう重ね継手については、
0.5L1または1.5L1以上ずらさないといけないということになっています。
重ね継手に限らず圧接継ぎ手などでも継ぎ手の位置をずらさなければなりません。
継手は不安定な要素があり、全て同じ位置に継手があった場合、不安定な要素が一か所に集中してしまうことになるので、継手位置は分散する必要があります。
まとめ
- コンクリート強度が強くなると重ね継手の長さは短くなる
- 鉄筋が強くなると重ね継手の長さは長くなる
- 重ね継手長さのポイントL1=40dと400㎜
- 異なる径の重ね継手は細い方の径の長さでよい
- となりあう継ぎ手の位置は既定の距離をあけてずらす
圧接継手について知りたい人は以下の記事も参考にしてください。