安定勾配とは、斜面が崩れることなく自然に保持できる角度のこと。
この記事では、安定勾配の意味や計測方法、土質や水との関係について解説します。
安定勾配とは
安定勾配とは、斜面が崩れることなく自然に保持できる角度を指します。
土木関連の文献では、安定勾配に関する規定が定められています。
都市計画法でも、盛土を行う場合の法面の角度は「30度以下」と規定されています。
安定勾配を超える角度で盛土をした場合、土砂崩れなどの可能性が高まるため、法面の安定を保つために擁壁の設置が必要となります。
さまざまな要素が安定勾配を決定しますが、実務においては、土質の種類と土の高さによって標準的な勾配が日本道路協会などにより定められています。
したがって、現場に応じた安定勾配を決定し、設計などに用いることが一般的です。
勾配の計測方法
土木において、法面の勾配は「1割5分」というような表現で表されます。
例えば、「1割5分」は、垂直方向に1m上がった場合に水平方向に1.5m進む角度を表しています。
「S=1:1.5」と図示されることもあり、これは「1割5分」と同じ意味を持ちます。
施工図では「S=○割○分」という表記が用いられますが、土圧の計算では度数表記が使われるなど、設計の種類によって表記法に違いがあります。
一般的な安定勾配の基準としては、切土の場合は「S=1:1.0」、盛土の場合は「S=1:1.5」などとされています。(参考:盛土工指針、日本道路協会発刊)
斜面勾配の計測は安全性を確認する基本であり、災害を予防するために重要なステップとなります。
土質と安定勾配の関係
土質は安定勾配を決定する大きな要素の一つとなります。
例えば、粘性土は土粒子の粒径が細かく、粒子間の粘着力が強いため、比較的急な勾配を維持することが可能です。
一方、砂質土は土粒子の粒径が大きく、粘性土のような粘着力がないため、土粒子間の接触力による抵抗力が滑りを防ぐ主力となり、より緩やかな勾配が必要となります。
土質の判定は多種多様な土質試験により決定され、土木構造物を設計する上で重要なパラメータとなります。
水と安定勾配の関係
土に含まれる水分は安定勾配に大いに影響を及ぼします。
適切な水分量は土粒子間の結束力を高め、安定した勾配を維持することを助けます。
しかし、水分が過多になると、土粒子が離れてしまい、斜面は不安定になります。
土に含まれる水分量は、「土の含水比試験」により定量化されます。
得られた含水比は、施工管理や圧密に関する検討などに活用され、安全な構造物を設計する上で重要なパラメータとなります。
安定勾配の運用と管理
安定勾配は主に、道路工事で道路を掘削した際の掘削面の勾配や、盛土を築造する際の盛土面の勾配などに利用されます。
そして、工種や土の性質によりその勾配は異なります。
安定勾配の理解は、土木設計だけでなく、土木構造物の維持管理においても重要で、災害を未然に防ぎ、安全な国土利用を可能にします。