用語の解説 鉄筋コンクリート造

鉄筋継手の種類とは?特徴や施工上の注意点を分かりやすく解説!

2022年11月17日

鉄筋継手とは

 目的

鉄筋は運搬などの理由から最大長12mで計画することが一般的です。

その長さを超える構造物を計画するときに、鉄筋を継ぐ必要があります。

このときに必要となるのが鉄筋継手です。

特徴

鉄筋継手部分は母材と比較すると性能が落ちて弱部になります。

鉄筋継手の種類によってその考え方が異なるので、適用するときは十分注意する必要があります。

鉄筋継手の分類

継手の等級

鉄筋継手の性能を確認する試験により、継手の等級を決定します。

鉄筋継手部分の強度、剛性、伸び能力、すべり量、高応力繰り返し特性などから等級を決定します。

等級にはSA級、A級、B級、C級とあります。SA級が最も性能が高い等級になります。

継手の信頼度

鉄筋継手は人の手により施工され、検査されます。その信頼度によって、鉄筋継手に見込む強度を決定します。継手の信頼度は施工のレベルを1〜3、検査のレベルを1〜3で評価して決定します。

レベル1の方が精度の高い施工と検査になります。

施工のレベルとは、その会社が協会から特別な認定を持っているか、個人が資格を持っているかなどの要素から決定されます。

検査のレベルは、継手の検査頻度とその判定基準から決定されます。

継手の信頼度は、施工・検査のレベルからⅠ種〜Ⅲ種に分類します。

I種の継手は不良率が極めて低く、ほとんど母材相当の性能を見込めます。

Ⅲ種は、不良率が高いため、継手部分の強度を低下させた設計を行うなど配慮が必要となってきます。

重ね継手

種類と施工方法

重ね継手は鉄筋同士を所定の長さ以上を重ね合わせて継ぐ方法で、鉄筋継手の中で最も使用頻度の高い継手です。

基本的な考え方としては、基本定着長分重ね合わせて、その部分で互いの鉄筋が定着しているという考え方になります。

継手の性能

鉄筋継手としての性能は高くないので、部材に発生する応力の小さい箇所を選んで配置します。

重ね継手の性能は、等級として定義されておりませんが設計上の取扱いから考えるとB級相当になります。

ただし、継手の設置箇所に発生する応力次第では補強をする必要があります。

適用する指針によりますが、設置する箇所に発生する応力により、重ね継ぎ手長を長くすることが必要になります。

加えて、横方向鉄筋などを補強する場合もあります。

地震時に降伏するような箇所には設けないルールとなっておりますので、注意が必要になります。

検査方法

検査する方法は、重ね継ぎ手長と継手間長が設計図通りになっているかどうかの確認を実施します。

採寸のみの検査となりますので、簡易的な検査で施工を完了させることができます。

ガス圧接継手

種類と施工方法

ガス圧接継手は、主にアセチレンガス・酸素を用いて鉄筋の接合部分に加熱しながら圧力を加えて接合する継手です。

圧力を加えるときには、専用の治具を使って施工するため、ある程度の余長が必要になります。

また、圧接することにより鉄筋が縮むので、精度良く鉄筋を施工するためには継手配置に配慮する必要があります。

ガス圧接継手には手動ガス圧接、自動ガス圧接、熱間押抜きガス圧接の3種類あります。

手動および自動ガス圧接が主流で、特に品質に配慮するときに熱間押抜きガス圧接を用います。

継手の性能

ガス圧接継手の継手等級はSA級になります。

高い性能を持ちながら安価に施工が出来るので、使用頻度の高い継手となっています。

継手の信頼度は、一般的な検査基準で施工する場合はⅡ種になります。

圧接継手を適用する場合は設計段階で継手部分の強度、継手の配置に配慮する必要があります。

検査方法

検査は、外観検査・圧接施工記録・非破壊検査を実施します。

「鉄筋継手工事標準示方書 ガス圧接継手工事(2017年)」に従い、検査を実施することが基本となります。

耐震設計上補強が必要な箇所などに圧接継手を設ける場合があります。

この時、標準の検査に加えて頻度を高めるなどして、鉄筋継手の信頼度をⅠ種とする場合があります。

溶接継手

種類と施工方法

溶接継手には突合せアーク溶接継手、突合せ抵抗溶接継手、フレア溶接継手の3種類あります。

突合せアーク溶接はエンクローズ溶接とも呼ばれており、鉄筋同士を突き合わせて溶接する方法になります。

圧接のように圧力を加えないので、鉄筋の長さが縮まることはありません。

突合せ抵抗溶接継手は工場で加工を行い、主にせん断補強鉄筋として用います。

溶接方式はアプセット溶接とフラッシュ溶接がありますが、いずれも加圧・通電して行う溶接なので鉄筋の長さが縮まります。

フレア溶接は鉄筋同士を突き合わせずに、鉄筋の側面同士で溶接する継手になります。

継手の性能

溶接継手は、公的認定機関によりA級の認定を受けた施工要領書により施工される継手はA級になります。

継手の信頼度は、一般的な検査基準で施工する場合はⅡ種になります。圧接継手と同様に、設計段階で配慮が必要になります。

検査方法

検査は突合せアーク溶接継手は外観検査・超音波探傷検査を実施します。突合せ抵抗溶接継手は外観検査・破壊検査を実施します。「鉄筋継手工事標準示方書 溶接圧接継手工事(2017年)」に従い、検査を実施することが基本となります。

機械式継手

施工方法

機械式継手には、ねじ節鉄筋継手、モルタル充填式継手、摩擦圧接ねじ継手、スリーブ圧着ねじ継手、スリーブ圧着継手、くさび固定継手があります。

それぞれ鉄筋を継ぐ機構が異なるため施工方法が異なります。

いずれの継手も圧接と溶接とは異なり、火気を使用しません。

したがって、施工の可否は天候によらないため、天候による工程遅延を防ぐことができます。

継手の性能

機械式継手の製品によって、継手等級が異なります。

主にSA級かA級のものになります。

SA級の継手はその性能を確保するために、A級よりも材料および施工手間にかかる費用が高くなります。

設計上必要な継手の性能を明確にして、合理的な継手選定を行う必要があります。

 検査方法

機械式継手はその機構毎に検査方法が定められています。

機械式継手の信頼度はⅠ種またはⅡ種になります。

施工レベルを上げるためは公的認定機関から認定された品質管理体制の下で施工する必要があります。

検査レベルを上げるためには技術講習会を受講し資格を取得した検査者が検査を行う必要があります。

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