鉄筋の継手の1種である『あき重ね接手』。
この記事では、あき重ね接手の間隔や基準、適用箇所を分かりやすく解説します。
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重ね継ぎ手とは
あき重ね継手は、重ね継手の一種です。
あき重ね継手を理解するために、まずは重ね継手について解説します。
鉄筋の継手
鉄筋コンクリートで使用する鉄筋は運搬による制限で最大長が12mとすることが一般的です。
したがって、それよりも長い構造物を構築する場合は、複数の鉄筋を継ぐ必要があります。
当然鉄筋を継いでいる箇所は、1本の鉄筋よりも性能が落ちてしまいます。
しかし、鉄筋の継手のルールを守ることで、母材相当の性能とすることもできます。
あるいは、80%の耐力で設計すれば問題ない等のルールもあります。
そのルールの決め方は複雑なので、本稿での説明は割愛します。
重ね継手
重ね継手は、鉄筋同士を基本定着長分重ねる継手で、一番オーソドックスな継手になります。
重ね継手は継手としての性能は高くありませんが、施工性が高いことが特徴。
設計上配置可能な部分には、基本的に重ね継手を採用し、やむを得ない場合その他の継手を検討します。
重ね継ぎ手は継手の位置が揃ってしまわないように、千鳥配置にして継手同士の間隔を鉄筋径の25倍以上離して設置することが基本です。
やむを得ずこのルールが守れない場合は、継手長を長くするなどして対応することができます。
重ね接手は、オーソドックスな継手ではありますが、配置のルールは複雑なので適切な設計指針を確認して、配筋要領図を作成することを心がけましょう。
あき重ね継手とは
あき重ね継手とは、重ね継ぎ手の鉄筋同士を少し離した継手になります。
重ね継ぎ手は相互の鉄筋を密着させることが原則ですが、既定のあきであれば鉄筋の継手として有効になります。
後述する建築の指針には規定されておりますが、土木の設計指針には規定されておりません。
設計指針の内容
あき重ね継手の設計指針について解説します。
鉄筋コンクリート造配筋指針・同解説
あき重ね継手は、「鉄筋コンクリート像配筋指針・同解説」に記載があります。
この指針は、鉄筋配置の基本的な考え方から、具体的な配置方法を示しているので配筋図を作成する時に非常に役立つ本になります。
建築の指針ではありますが、土木設計にも参考にすることが多く、特殊部における配筋の考え方に迷ったときは一読してみることをお勧めします。
規定している内容
この指針の記載では、スラブ筋・壁筋などで、隣接するパネルあるいは階により鉄筋の間隔が変わる部材などに用いてよいとしています。
あき重ね継手の鉄筋相互の位置関係は、下図に示す通り「継手長の0.2倍かつ150㎜以下」と示されております。
この規定内であれば問題なく適用することができます。
ただし、建築の指針に記載されている内容ですので、土木構造物の設計に適用する場合は設計者・監理者と協議を行う必要があります。
この考え方は米国のACI基準(Buildhing Code Requirements for Structural Concrete ACI318)の規定によっています。
あき重ね継手を適用する箇所
あき重ね継手が使用される箇所を解説します。
梁の高さが変化する箇所
梁の高さが変わっている部分は、主筋の配置位置に段差ができます。
曲げを負担できるように定着させる必要がありますが、あき重ね継手の規定以内であれば、ずらして配置すれば問題ありません。
柱の幅が変化する箇所
柱の幅が変わっている部分は、主筋の配置位置に段差ができます。
曲げを負担できるように定着させる必要がありますが、あき重ね継手の規定以内であれば、ずらして配置すれば問題ありません。
壁に箱抜きを設けた箇所
壁などに箱抜きを設けた場合、主筋の配置位置に段差ができます。
曲げを負担できるように定着させる必要がありますが、あき重ね継手の規定以内であれば、ずらして配置すれば問題ありません。
規定のあき以上に離れた場合の対処
鉄筋の配置位置に段差が生じてしまった箇所で、あき重ね継手の規定上にあきがあいてしまった場合、どのように対処すればよいか紹介します。
規定以上のあきがあいてしまった場合は、互いの鉄筋を定着する必要があります。
鉄筋を伸ばして定着させる
曲げに抵抗する必要がある場合は、有効高さ+基本定着長の長さを満足することが基本となります。
その長さ分鉄筋を伸ばして定着させることが最も基本的な手段になります。
折り曲げて鉄筋を定着させる
部材形状などの制限によって直線で鉄筋を伸ばすことができない場合は、折り曲げて定着長を確保する必要があります。
曲げ内半径が鉄筋径の10.5倍以下の場合は、鉄筋が曲がっている部分は定着長に算定してはいけませんので、注意が必要になります。
機械式定着を用いて定着させる
部材寸法に制限があり、折り曲げて定着長を確保することが難しい場合は、機械式定着工法を用いる方法があります。
機械式定着工法は、定着長を短くすることが可能なので、部材高さが薄いあるいは部材幅が小さい箇所での適用が考えられます。
しかし、機械式定着を用いる場合は、コスト増となります。