一般的な山留工法である親杭横矢板工法。
この記事では、親杭横矢板工法の特徴や目的、設計・施工方法をわかりやすく解説します。
タップできる目次
親杭横矢板とは
親杭横矢板は、土留め壁の一種で土留め掘削を要する工事に使用されます。
簡易で安価な施工方法なので、ポピュラーな工法です。
親杭横矢板の読み方
親杭横矢板(おやぐいよこやいた)と読みます。
部材の名称
親杭横矢板工法に使用される部材の名称や役割を解説します。
親杭
親杭は横矢板を支える杭であり、H鋼を使用します。
掘削深度や土圧の大きさによりその仕様が決定されます。
横矢板は土圧を受ける部材であり、木矢板を使用することが多いです。
親杭の間隔が広い場合などはH鋼を使用するケースがあります。
親杭横矢板工法の土留め壁としての特徴
親杭横矢板の特徴について解説します。
遮水性
親杭横矢板では遮水できません。
親杭と横矢板、横矢板と横矢板の隙間から地下水が流入するため、地下水位が高い場所では適用が難しいです。
地下水位が高い場所でも、地下水位低下工法を併用して適用することができます。
適用深度
適用深度は親杭のH鋼が施工できる深度までとなります。
ただし、前述した地下水位による条件で適用できる深度が決定する場合もあります。
経済性
数ある土留め壁の中で、親杭横矢板工法は、最も安価な工法になります。
設計方法
親杭横矢板の設計方法について解説します。
設計フロー
土留め設計は以下のフローで設計します。本稿では土留め壁の設計までを説明します。
設計手法
主に慣用法で設計しますが、近接構造物がある場合は弾塑性法で設計します。
地盤条件の確認
地盤調査等で整理した土質定数を確認して、設計で用いる土質定数を確認しましょう。
ボーリング調査が複数ある場合は、土留め設計に不利な土層を選定して設計モデルとする場合が多いです。
地下水位の高さを確認し、親杭横矢板を適用できるか確認しましょう。
荷重の算定
設定した土質定数と地下水位から土留め壁に作用する土圧を算定します。
検討項目および設計手法により土圧の算定方法が異なります。
親杭横矢板では慣用法が用いられることが多いため、慣用法で説明します。
根入れ長の計算を行うときは、モール・クーロン式を用いて土圧を算定します。
断面計算を行うときは、土の単位体積重量、掘削深さによる係数、地質による係数を用いて算定します。
この土圧は、多数の土圧測定結果を、慣用法に用いることを前提として整理し得られた見かけの土圧分布です。
元になった土圧実測例はあくまで標準的な地盤、掘削深さ、施工法についてのものになります。
したがって、適用にあたっては、特殊な地盤ではないかなど注意が必要になります。
親杭の設計(杭仕様の決定)
算定した土圧に対して必要な断面性能を確保するため、親杭の仕様と親杭の設置間隔を決定します。
鋼矢板のような連続した土留壁とは違い、受働抵抗は親杭の幅部分のみとなりますので、注意が必要です。
道路土工-仮設構造物工指針では、最小部材がH300x300x10x15で、最大間隔は1.5mとなっております。
親杭の設計(根入れ長の計算)
決定した杭仕様の土留め根入れ長を計算します。
掘削底面の安定検討から決定する根入れ長とつり合い根入れ長のうち、長い方で根入れ長を決定します。
この時杭仕様の決定と同様に、受働抵抗は親杭の幅部分のみとなりますので、注意が必要です。
横矢板の設計
親杭間隔をスパン長とした単純梁の計算で断面力を算定します。
その断面力で応力照査を行い、矢板の厚さを決定します。
木の種類によって許容応力が異なるので、注意が必要です。
施工方法
親杭横矢板の施工方法について、解説します。
施工フロー
親杭横矢板の施工フローを以下に示します。
杭・壁体の中心測量
親杭の施工布掘り(必要なら)
掘削・横矢板の施工
施工法と使用機械
施工法と使用機械を整理した表を以下に示します。
掘削深度、地盤条件、周辺環境など現地条件に合わせて、施工法を選定します。
親杭の設置
設計図に示されている位置を測量し、選定した施工法で親杭を設置します。
親杭が長い場合は、溶接またはボルトにより継手を設けるため、杭を設置しながら所定の継手を施工します。
掘削・横矢板設置
掘削しながらH鋼のフランジ部分に横矢板を設置します。
埋戻し・撤去
埋戻しながら、横矢板を撤去します。原地盤高さまで埋戻しが完了したら、親杭を引抜き撤去します。
施工上の留意点
親杭横矢板工法の施行時の留意点を解説します。
地盤条件・埋設物の有無確認
オーガーで先行掘削して施工しますが、地盤が硬すぎる場合は掘削不可なので、地盤条件をよく確認しましょう。
同様の理由で既設埋設物がないかよく確認しましょう。
想定外の地下水
実際に掘削した時に、地下水位が想定よりも高かった場合、釜場排水などで対処していくことが考えられます。
この時、周辺の地下水位低下および地盤沈下が懸念されるので、薬液注入による遮水を実施するかなど検討する必要があります。