VE案とは
建築業界におけるVE案とは、「Value Engineering(バリューエンジニアリング)」の略称で、提案対象の性能(質)を維持しつつコストを削減する提案のことを示します。
VEに関する提案なので、VE提案と呼ぶこともありますが同じ意味です。
VE案の使い方
適切なタイミング
VE案は、基本設計、実施設計、現場の各段階で色々な立場で行われます。
どの段階でも性能を維持することが大前提であるため、コスト削減効果はありますが、最も効果的なタイミングは、計画初期段階(基本設計時)が最も効果的です。
(こちらの文章が良く理解できません。また、「最も効果的」が連続してしまっています。)
なぜならば、全体のコストが積みあがる前の初期段階の方が、計画内容自体を調整しやすく、コスト削減効果が高いのです。
計画の進行中は常にコストコントロールを行いながら進めるため、積極的にVE案が検討されています。
設計段階では何案も同時に検討を進めているため、設計者はコストと見合うデザインとするために工夫を凝らしており、意識的にVE案を検討せずとも、デザインと同時併行でVE案を検討しているものです。
目的・役割
VE案の本質的な目的はコストを下げることですが、性能を下げない前提で検討しなければなりません。
設計者、施工者、監理者、それぞれの立場によってVE案の検討領域は変わっていきますが、それぞれの立場でコストを予算内に納めるために四苦八苦するのです。
また、計画初期段階が最もコスト削減効果が高いですが、現場段階だからといってVE案の検討が行われないかというとそうではありません。
監理者の立場で記述すると、どの現場でも施工者サイドから沢山のVE案が示されています。
現場では、金額調整を行いながら建設工事を進めるため、VE案を沢山示し採用してもらうことでコストコントロールを行う役割を果たしています。
現場段階でのVE案は、構造に関する提案は少なく仕上げ材などの変更が多いです。
現場で構造を変更するということは、コスト削減効果は高いですが、様々なリスクが伴います。
たとえ合理的な理由があったとしても計画変更申請など行政手続きが必要になってしまえば建築主に余分なコストを負担させることになり大変な迷惑がかかることから、一般的には現実的ではないからです。
VEの具体例
設計段階
外部仕上げを二丁掛タイル張りから安価のタイル張りに変更するVE案について考えてみます。
二丁掛タイルとは、タイルの大きさも厚みも立派な材料で高価なものです。
ここでは、タイル張りであることに変更はなく、断熱性能や耐候性能なども変更がなかったとすると、両者とも性能を維持していることになるため、VE案として成立します。
しかし、見た目の印象が変わってしまうことになるので、VE案にはデザイン面で譲歩が欠かせません。
コストを下げるには、性能を変えずにデザインを妥協することもよくあることです。
他には、実施設計をまとめる段階を考えてみます。
工事費を積算した後で、予算を大幅に超えてしまったとすると、もはやVE案ではまかなうことができず、抜本的な計画の見直しになってしまうことがあります。
このような場合には、VE案を数多く検討したとしても予算金額には届かないことが目に見えているため、設計者はやむを得ず基本性能自体の見直しを検討する方法にシフトすることになります。
実務では、一度積みあがった計画が初期段階へ逆戻りになることは避けたいため、最も避けた状況であるといえます。
現場段階
現場で示される1例として、仕上げの変更があります。
仮に内装仕上げで考えると、壁紙、塗装、素地のまま、仕上げには沢山の選択肢がありますが、できる限りメーカーを1社に絞るというVE案も実務ではよく行われます。
1社に絞ると1度に沢山の仕上げを発注することができるため、同じ材料でも発注する量によってコストメリットが得られるからです。
注意点
現場段階のVE案を検討する場合、施工者から示されるVE案の中には、性能が下がってしまう内容も混ざっていることが多く、建築の品質を保つ上で提案内容を本当に採用してよいか、設計監理の立場でチェックする必要があります。
建築主は素人であることが多いため、設計監理者は施工者の示すVE案が本当に性能が維持できるのか、積極的にコミュニケーションを取り、見極めることになります。
CD案との比較
CD案とは
VE案に対して、CD案(コストダウン)という言葉があります。
CD案はコストを下げることを第一の目的とするため、性能が下がることを前提として行われます。
VE案ではまかないきれない程の減額を行わなければならない場合、CD案を検討することになります。
例えば、「性能の高い壁紙仕上げ」を「一般的な塗装仕上げ」に変更すると、そもそもの性能が変わってしまいますが、壁紙よりも一般的な塗装の方が安価であるため、コストダウンにつながるとうことです。
「CD案」と「VE案」の違いと共通点
ここまで記述してきたように、VE案は性能を維持することが大前提ですので、CD案のように性能を変える前提であっては、そもそもVE案の内容ではなくなってしまいます。
VE案とCD案には、性能を維持するか否かの違いがありますが、コスト調整に対する検討であることは共通点と言えます。