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通り芯とは
役割・目的
建築図面の製図表記において、最も基本となる基準線のことを「通り芯」と呼びます。
建物を設計するには、多くの情報を整理して図面化する必要があります。
建物の一部が拡大された図面も、縮尺の異なる図面も、今建物のどこを示しているのか相互に確認できるようにする必要があり、通り芯はその役割を担っています。
基準の線は通り芯として表現され、通り芯と通り芯の間に寸法を与えることで、複雑な建築物の形状を示すことができます。
建築図面には、目的に応じて
- 設計図
- 施工図
- 製作図
- 竣工図
など様々な名称で、役割の異なる図面が存在します。
一つの建築物を表現している図面は全て同じ通り芯によって表現されることで、誰もが読み取りやすいように工夫されています。
建築図面は読み物であり、各種図面を同じ番号の通り芯によって表記することで、横断的に図面を把握することが可能となります。
図面伝達
一般に設計図には意匠図、構造図、設備図などがありますが、複数の図面に情報が分割して書かれるため、それらをつなぐ役割をするのが通り芯です。
通り芯は1本ではなく、複数の通り芯がある一定間隔で並列し、それらに寸法を与えることで2次元の図面として他者に伝達することができます。
一般的な製図表現
一般的な四角い建築物は、X通りとY通りなど通りに記号をつけて表現されます。
円弧上の建物や複雑な形状の建物はX通り、Y通り、Z通りなど様々な角度を持つこともあります。
X通りをX軸とも呼びますが、一般的にはX軸の左側から番号を付して、X1通り、X2通りと名前を付けます。
通り芯に名前を付けることで、図面を介した情報伝達、コミュニケーションツールとして機能します。
例えば、「X3通りでY4通りの柱」と呼ぶことで、図面を座標的に読み取り他者へ伝えることが可能となります。
通り芯は主に建物の柱や壁などの構造部分における中心線とも言えます。
〇〇芯との違い
柱芯
柱の中心線として描かれる通り芯を「柱芯」と呼びます。
設計図における、意匠図と構造図では柱芯を基準に各寸法を計測して、お互いの図面情報を伝達できるようにします。
壁芯
壁の中心線として描かれる線を「壁芯」と呼びます。
壁芯と柱芯は一致することもあれば、それぞれずれていることもあります。
仮に壁構造の建築物があった場合、壁芯がそのまま通り芯となることもあります。
面積との関係
建築物の面積を計測する場合、木造の場合は柱芯を基準としますが、鉄筋コンクリート
造や鉄骨造の場合は壁芯を面積の基準とするのが一般的です。
鉄骨造では、外壁を含めた壁芯をどこで測るか難しいですが、鉄骨柱を通り芯として、壁芯は面積計測用に、通り芯からの寸法を表記して、両者とも記載することもあります。
製図における注意点
通り芯の線種
製図のルールとして、通り芯は一点鎖線と呼ばれる線種で表現します。
昔は手書きで書き分けていましたが、現代ではパソコンによるCADを使用するため、線種をかき分けて表記することは非常に簡単になりました。
また、平面図や断面図では断面ラインを太線で表記しますが、通り芯は細線で表記することが一般的です。
通り芯は、図面表記の中で最も先に記載し、作図手順としても通り芯は基準として描かれます。
構造種別
柱や壁には材料の厚みがあるため、その中心を柱芯や壁芯としますが、構造種別により通り芯をどこで設定するかが変わってきます。
鉄筋コンクリート造の場合、壁の厚みが20cmであれば、仕上げから10cmの位置を壁芯や通り芯として表現されます。
壁芯が通り芯と一致するかは建物の構造によって異なります。
鉄骨造の場合、柱や壁の大きさによって通り芯の位置は変わりますが、基本的には柱芯が通り芯であることが多いです。
通り芯を決めるのは、最初に図面化する設計者の役割となります。
設計者は、建物の形状を表現するのに最も適切な位置を通り芯として定めます。
設計から現場へ
情報伝達
設計された建築物は設計図として2次元の紙の上に表現されています。
設計者が施工者へ伝達する情報の基本となるのが通り芯となります。
最近では、3次元CADを利用したBIMシステムなどにより、現場への情報伝達の手法は多様化しました。
どの図面形態でも、現場に柱や壁の位置を正確に投影することは変わらないため、通り芯は今でも図面表記の基本となります。
工事現場の墨出し
設計図に書かれた通り芯は建物の基準となり、2次元の世界である図面から建設現場に投影されます。
建設現場に投影する際、通り芯は「墨出し」と呼ばれる方法で転写されます。
建設現場で建物の一部分を示す場合も「〇〇通りの通り芯から1000mmです」などと伝達します。
また、建設現場で通り芯が壁の型枠などにより見えなくなってしまう場合は、返り墨といわれる手法で、予め型枠などで隠れる部分から寸法を離して墨出しをしておくこともあります。
現場が図面通りに施工されているか、設計監理者が立合検査を行う際も、通り芯位置を相互で確認し合うことになります。