段差を解消するための傾斜路のことをスロープといいます。
この記事では、スロープの意味や目的、基準、手すりの高さ、設計時の注意点について解説します。
スロープの意味
スロープ(slope)とは、段差を解消するために階段に代わって設ける、傾斜路の事を指します。
公共建物や住宅のアプローチ付近の階段横に併設されることが多く、勾配、幅、手摺などについて、建築基準法他により設置基準が示されています。
スロープの設置目的
自転車や車椅子利用者、足腰の弱っている高齢者が歩きやすいように、階段ではなく傾斜路にするもので、移動のための利便性や安全性を向上させるのが目的です。
人だけではなく、車を対象としたものもあり、立体駐車場の車路に用いられています。
スロープの設置基準
スロープを設置するには、各種の法律の定めに適合させる必要があります。
建築基準法施行令第26条では、種別ごとに以下のように定められています。
階段に代わる傾斜路は、次の各号に定めるところによらなければならない。
・勾配は、1/8を超えないこと
・表面は粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げること
種 別 | 幅 | 勾配 | 踊場踏幅 |
(1)小学校(児童用) | 140㎝以上 | 1/8以下 | 1.2m以上 |
(2)中学校等(生徒用)、物品販売業(1,500㎡超) 劇場・映画館、演芸場・観覧場、公会堂・集会場 |
140㎝以上 | 1/8以下 | 1.2m以上 |
(3)直上階の居室の床面積合計200㎡超 居室の床面積合計100㎡超の地階 |
120㎝以上 | 1/8以下 | 1.2m以上 |
(1)~(3)を除く 一戸建て住宅 | 75㎝以上 | 1/8以下 | 1.2m以上 |
手摺の要否
スロープには、幅や勾配以外に手摺の設置についても基準があり、建築基準法第26条第2項に以下のように定められています。
・前3条の規定(けあげ及び踏面に関する部分を除く。)は、前項の傾斜路に準用する。
となっており、以下の第25条「階段等の手摺等」の基準を守る必要があります。
・階段(スロープ)には、手すりを設けなければならない。
・階段(スロープ)及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又 はこれに代わるものを設けなければならない。
・階段(スロープ)の幅が3mをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければな らない。
スロープの手摺の高さ
建築基準法では、屋上等の安全上必要な手摺は1.1m以上との定めがありますが、それ以外は基準が設けられていませんので、自由に設定することができます。
一般的には75~85㎝程度が望ましいとされています。
スロープ設計の注意点
スロープは、建築基準法によれば階段と同様の扱いになりますが、バリアフリー法等の基準や、誘導基準が定められているケースがあり、注意が必要です。
また、建築基準法で示している勾配は、最低限の基準であり、実際の使用上は急勾配で使い難い物であることを認識し、使用場所や使う人に応じた適切な設計とする必要があります。