コンクリート打設後に表面に水が浮き上がる「ブリーディング」という現象。
この記事では、ブリーディングの原因と対策、コンクリートへの影響、単位水量とブリーディングの関係について解説します。
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ブリーディングとは
ブリーディング(Bleeding)とはコンクリートを打設したあとのコンクリート表面に水が浮き上がる現象を指す土木工学や建築学の専門用語です。
混合水や添加剤が適切でない場合、または施工方法が不適切な場合に発生します。
ブリーディングは、下記のような不具合を起こす可能性があります。
- コンクリートの強度を低下させる
- 表面の仕上がりを損る
- ひび割れのリスクを増加させる可能性があります。
ブリーディングの原因
ブリーディングが発生する原因について解説します。
材料の原因
コンクリートの構成はセメント、細骨材、粗骨材、水、そして必要に応じて添加剤から成り立っています。
これらの成分の適切なバランスが保たれていない場合、ブリーディングが発生する可能性があります。
骨材やセメントは水よりも密度が大きいので、時間と共に比重の大きな骨材やセメントは沈下し、比重の小さな水分が浮上することでブリーディングが発生します。
例えば、セメントの量が過剰であったり、水セメント比が高すぎたりすると、ブリーディングは増大します。
また、骨材の粒度分布が不均一であったり、骨材が適切に湿潤されていない場合にも、同様の現象が起こる可能性があります。
コンクリート自体は密度や大きさが異なる材料から出来ているので、材料の分離はどうしても起こってしまうもの。
セメントと水が水和反応を起こすのに、一般的にセメント質量の約30%前後の水が必要。
生コンの製造の際、可能な限り水を少なくすることが理想的ですが、粘度が高くなり施工しづらくなります。
そこで、流動性のある施工しやすいコンクリートを製造するために水分を追加して製造されます。
つまり、設計の時点で水が多いとブリーディングが発生しやすく、水の量が増えたコンクリートは骨材の粒度の問題も合わさって、ひび割れなどを誘発してしまうことも…。
施工時点の原因
適切な配合であるコンクリートでも施工時の打設速度が早かったり、打設高さが高くなったりすることもブリーディングの原因。
また、高さの違う部分を一度に打設してしまうと打設面の高さに比例し、コンクリートの沈下量は大きくなり、ひび割れの原因となってしまいます。
ブリーディングが原因のひび割れは打設後数時間で発生しやすいです。
一般的に水平鉄筋の上に直線上、型枠面のセパレータや壁、柱、梁、スラブの結合部、鉄筋の被りが不足している箇所でも発生します。
ブリーディングの対策
ブリーディングが発生するとひび割れ発生の原因になる等の不具合が起こる可能性があるため、以下の対策を行います。
ブリーディング水を少なくする
ブリーディングを減らすための最も直接的な方法は、水セメント比を適切に保つことです。
これにより、不要な水分の発生を抑制し、コンクリートの品質と強度を保つことができます。
また、骨材の選択とその湿潤度も重要です。適切な粒度分布を持つ骨材を選び、適切に湿潤させることで、水分の移動を抑制することができます。
余分な振動を与えない
ブリーディングを抑制するためにはコンクリートの打設後、余分な振動を与えない適切な養生が重要です。
打設後すぐに仕上げを行わず、表面に水が出なくなるまで待つことも重要です。
適切な仕上げを行う
打設後にセメントと骨材の分離が発生するので、スポンジなどを使用して水分を取り除くのが望ましいです。
その後、適切な仕上げを行うことで、コンクリートの表面が均一になり、水分の上昇を抑制することができます。
また、打設後に鏝(こて)でコンクリートの表面を叩いたりせず、振動機による余分な振動を与えない事も重要です。
これにより水分の上昇速度を抑えることが可能です。
適切な打設速度、打設高さを管理する
そして打設速度は30分当たり、1.0m~1.5m程度、打設高さはコンクリートの吐き出し口と打ち込み面を1.5m以下とし、高さの確保が難しい場合はシュートなどを活用する方法もあります。
タンピングを行い余分な水分を除く
また、コンクリートを打設したら、表面に出た水分を除去し、タンピングなどを実施し、再振動を与えることでひび割れの修復や発生を抑制する事が可能。
ブリーディングの影響
ブリーディングが発生するとコンクリートの強度や耐久性に影響を及ぼします。
また、ブリーディングによる最も大きな影響はひび割れが発生すること。
そもそもなぜブリーディングによりひび割れが発生するのか…。
ブリーディングにより発生するブリーディング水は打設後、時間をかけてコンクリートの表面に上昇してきます。
この時、コンクリートの表面高さは打設直後の高さより低下します。
これはブリーディング水が蒸発し、コンクリートの体積が低下するのが原因。
コンクリートの体積が低下する中、鉄筋上部にあるコンクリートは鉄筋による影響で沈下が拘束されます。
コンクリートがまだ固まっていない状態で表面が硬化し、収縮していく段階で差が生じると引っ張りが発生し、鉄筋に沿ったり、型枠内部にもセパレータの周囲にひび割れが生じてしまいます。
水とコンクリートの関係
ブリーディングと水
単位水量を増やすことでブリーディング水が増えます。
水より、骨材、セメントの方が密度が大きいので、
「水が一杯入っているコップの中に砂を入れたら沈下し、水が溢れる」
イメージしやすいですよね。
ブリーディングとコンクリート
ブリーディング水の発生を抑制するためには水分を減らすだけでなく、コンクリートの打設方法や打設後の処理が必須です。
試験方法
JISA1123にブリーディング量を試験する方法が規定されています。
JISA1123では所定の容器にコンクリートを打ち込む。
その後、浮上してくるブリーディング水を採取し、測定します。
これを10分毎に6回行い、その後、ブリーディング水が発生しなくなるまで30分毎に水を採取します。
ブリーディング量(Bq)
採取した水(V)、コンクリート上部の表面積(A)とすると
ブリーディング量(Bq)=V/A(㎤/㎠)
となり、ブリーディングにより溜まった水の高さを表す。
ブリーディング率(Br)
採取した水の質量に対する割合をブリーディング率(Br)となります。
採取した水の容積(V)、試験温度における水の密度(ρw)、試料中の水の質量(Ws)とすると、
ブリーディング率(Br)=(V×ρw/Ws)×100(%)
となります。
ただし、Ws=(W/C)×S×1000なり、Wはコンクリートの単位水量、Cはコンクリートの単位容積質量、Sは試料の質量である。
レイタンスとの違い
よく間違われやすいブリーディングとレイタンス。
ブリーディングはコンクリート中の水分であり、レイタンスはコンクリート中の微粒子による脆弱な層。
レイタンス処理はダムなどの打継面の付着を良くするために行い、コンクリートの硬化前にグリーンカットと呼ばれるレイタンス処理を行います。
まとめ
ブリーディングは、コンクリートの品質と耐久性に重大な影響を及ぼす可能性があります。
ブリーディングは単純に水分量で左右されるのではなく、構成されている骨材、セメント、施工速度や施工方法に左右されます。
材料の選択、水セメント比の管理、施工方法の適切な選択と管理は、ブリーディングの抑制にとって重要です。
これらを適切に管理することでコンクリートの施工において品質と耐久性を向上させることができ、建築物や構造物の長期的な性能と安全性を確保することが可能になります。
コンクリートは非常に繊細なものですので、様々な施工の条件、環境を考慮した上で設計することが大切です