あなたの悩み
・型枠支保工の監督署に届け出が必要高さは?
・型枠支保工の高さの安全管理のポイントは?
・型枠支保工の水平つなぎの高さによる基準は?
このような悩みを解決します。
型枠支保工は高さによって、
- 水平つなぎが必要になる
- 監督所への届出が必要になる
など様々な基準があります。
本記事では型枠支保工の高さに関係する重要なポイントを解説します。
型枠支保工の届出が必要な高さは?
型枠支保工は、その高さが3.5mを超えるとき、型枠支保工を設置する前に労働基準監督所に対して届出を提出しなければなりません。
労働基準監督署に提出する型枠支保工や足場の届出のことを「機械等設置届」といいます。
型枠支保工設置届が必要な高さ | 3.5mを超えるとき |
提出場所 | 所轄の労働基準監督署(厚生労働大臣) |
提出日 | 工事開始の30日前まで |
届出に必要な書類 | 組立図、強度計算書、工程表など |
届出必要部数 | 正副2部(提出用、控え用) |
注意ポイント
型枠支保工の設置は高さが3.5mを超える場合に必要となりますが、これは階高ではなく型枠支保工自体が3.5mを超える場合に必要になります。
もちろん3.5mを少しでも超えれば届出が必要となり、例えば3.6mの型枠支保工でも届出が必要になります。
機械等設置届(型枠支保工)とは?
機械設置届は労働安全衛生法の第88条に定められている、「計画の届出」の一部です。
該当工事の開始30日前までに、所轄の労働基準監督署に届出を提出する必要があります。
届出を提出しても、審査に時間がかかることや資料の不備や内容によって、是正や再提出となる可能性があるため30日前までに提出するようになっています。
届出を提出する目的としては、高さ3.5mを超える型枠支保工設置などの特に危険な作業において、事業者の計画する工事が、危険な計画、工法ではないことを労働基準監督署が事前に審査し、労働者の安全を確保することです。
「労働安全衛生法」
(計画の届出等)
第八十八条 事業者は、機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、厚生労働省令で定めるものを設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、その計画を当該工事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、労働基準監督署長に届け出なければならない。
ただし、第二十八条の二第一項に規定する措置その他の厚生労働省令で定める措置を講じているものとして、厚生労働省令で定めるところにより労働基準監督署長が認定した事業者については、この限りでない。
2 事業者は、建設業に属する事業の仕事のうち重大な労働災害を生ずるおそれがある特に大規模な仕事で、厚生労働省令で定めるものを開始しようとするときは、その計画を当該仕事の開始の日の三十日前までに、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に届け出なければならない。「労働安全衛生規則」
(計画の届出等)
第八十六条 事業者は、別表第七の上欄に掲げる機械等を設置し、若しくは移転し、又はこれらの主要構造部分を変更しようとするときは、法第八十八条第一項の規定により、様式第二十号による届書に、当該機械等の種類に応じて同表の中欄に掲げる事項を記載した書面及び同表の下欄に掲げる図面等を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
機械設置届(型枠支保工)に必要な書類
労働安全衛生規則の別表第七(第八十五条、第八十六条関係)
機械等の種類 | 事項 | 図面等 |
十 型枠支保工(支柱の高さが三・五メートル以上のものに限る。) |
一 打設しようとするコンクリート構造物の概要 |
組立図及び配置図 |
労働安全衛生規則では上記のように書かれていますが、実際にはさらに詳細な資料が必要となります。以下を参考にしてください。
型枠支保工の届出に必要な書類
届出用紙
(様式第20号)参画者の資格に関する職歴、勤務年数等も記入する必要があります。
打設しようとするコンクリート構造物の概要
設計図書、仕様書
構造、材質及び主要寸法
工程表
型枠支保工の工事開始日、解体予定日など設置期間が分かるもの
型枠支保工計画図
配置図(型枠支保工の平面的な配置)、組立図(型枠支保工の立面的な配置)、詳細図(固定方法や水平つなぎなどの詳細が分かる図面)
案内図
配置図や住所など、工事をする場所がわかる資料
施工計画に関する社内審査書
店社の定められた有資格者などの審査状況を確認するため資料、チェックや指摘・是正事項を記入し、審査委員長・審査担当者が捺印を行う。
強度計算書
型枠支保工の支柱等の応力計算書
使用部材のカタログ等
仕様部材のメーカーや強度が分かる資料
型枠支保工届出の作成に必要な資格
型枠支保工の計画を作成するのに資格は必要ありませんが、計画作成に有資格者を参画させる必要があります。
有資格者の参画とは、定められた資格を持つ人が、作成された計画をチッェクし、指摘および助言を行うということです。
具体的には、届出の際に有資格者が事前審査を実施した際の審査書を提出する必要があります。
(計画の届出等)
第八十八条
4 事業者は、第一項の規定による届出に係る工事のうち厚生労働省令で定める工事の計画、第二項の厚生労働省令で定める仕事の計画又は前項の規定による届出に係る仕事のうち厚生労働省令で定める仕事の計画を作成するときは、当該工事に係る建設物若しくは機械等又は当該仕事から生ずる労働災害の防止を図るため、厚生労働省令で定める資格を有する者を参画させなければならない。
届出に参画を定められた資格
(1) 型枠支保工に係る工事の設計監理又は施工管理の実務に三年以上従事した経験を有すること。
(2) 建築士法(昭和二十五年法律第二百二号)第十二条の一級建築士試験に合格したこと。
(3) 建設業法施行令第二十七条の三に規定する一級土木施工管理技術検定又は一級建築施工管理技術検定に合格したこと。
(4) 工事における安全衛生の実務に三年以上従事した経験を有すること又は厚生労働大臣の登録を受けた者が行う研修を修了したこと。
(5) 労働安全コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が土木又は建築であるもの
(6) その他厚生労働大臣が定める者
型枠支保工届出は誰が作成する?
型枠支保工の届出について作成については、事業者(元請け)が作成して提出することになります。
建設業で一定の仕事を開始しようとする事業者、ただし仕事が数次の請負によって行われる場合において、その仕事をみずからおこなう発注者がいるときは、その発注者、そのような発注者がいないときは元請負人が届出義務者となります。
型枠支保工の届出でよくある指摘事項
チェックリスト
- 型枠支保工の届出が組立開始30日前の届出となっていない。
→労働基準監督署は各資料で組立開始日を確認するので、工程表やその他資料で30日前になっていることもしっかり確認するようにしましょう。 - 型枠支保工の断面図が2面作成されていない。
→断面図は2面以上作成するようにしましょう。 - 型枠支保工のパイプサポートの水平つなぎが基準通りに設けられていない。
→水平つなぎは、定められた基準通りに取り付けを行うように断面図に表現しましょう。 - パイプサポートの滑動防止のための根がらみが設けられていないもの。
→断面図にパイプサポートの足元の根がらみを表現するようにします。 - 型枠支保工の配置図(平面図)に根太、大引き、パイプサポート等の配置及び寸法が記載されていない。
→型枠支保工の平面図では支保工のピッチなどの寸法が重要なので書き忘れないようにチェックしましょう。 - 型枠支保工の平面図の根太、大引き、パイプサポート等の間隔(ピッチ)が、強度計算で求めた間隔(ピッチ)と異なっている
型枠支保工のピッチは強度計算に基づいて決めるようにしましょう。 - 型枠支保工の届出で、強度計算を行っていないがある。
→型枠支保工は実際施工する部材に応じて各材料の強度計算が必要になります。
型枠支保工届出のワードファイル
型枠支保工届出の書類は以下のページからダウンロードすることができます。
型枠支保工届出の記入例
型枠支保工届の記入例を示します。
型枠支保工の高さと水平つなぎの基準
型枠支保工は支保工の種類によって水平つなぎの基準が設けられています。
支柱の種類 | 水平つなぎの基準 |
鋼管 | 高さ2m以内ごとに水平つなぎを2方向に設ける |
パイプサポート | 高さが三・五メートルを超えるときは、高さ2m以内ごとに水平つなぎを2方向に設ける |
鋼管枠 | 最上層及び五層以内ごとの箇所において、型枠支保工の側面並びに枠面の方向及び交差筋かいの方向における五枠以内ごとの箇所に、水平つなぎを設ける |
組立て鋼柱 | 高さが四メートルを超えるときは、高さ四メートル以内ごとに水平つなぎを二方向に設ける |
木材 | 高さ2m以内ごとに水平つなぎを2方向に設ける |
水平つなぎとは?
水平つなぎとは、型枠支保工がコンクリートの側圧等の力で横にずれ動いてしまわないように、支保工同士をつなぐものをいいます。
型枠支保工の部材については、詳しくはこちらにまとめたので参考にしてみてください。
参考記事:型枠支保工の留意点【根がらみ、水平つなぎ、滑動防止、ペコビーム、筋交い】
型枠支保工の高さと水平つなぎの法令
五の二 H型鋼又はI型鋼(以下この号において「H型鋼等」という。)を大引き、敷角等の水平材として用いる場合であつて、当該H型鋼等と支柱、ジャッキ等とが接続する箇所に集中荷重が作用することにより、当該H型鋼等の断面が変形するおそれがあるときは、当該接続する箇所に補強材を取り付けること。
六 鋼管(パイプサポートを除く。以下この条において同じ。)を支柱として用いるものにあつては、当該鋼管の部分について次に定めるところによること。
イ 高さ二メートル以内ごとに水平つなぎを二方向に設け、かつ、水平つなぎの変位を防止すること。
ロ はり又は大引きを上端に載せるときは、当該上端に鋼製の端板を取り付け、これをはり又は大引きに固定すること。
七 パイプサポートを支柱として用いるものにあつては、当該パイプサポートの部分について次に定めるところによること。
イ パイプサポートを三以上継いで用いないこと。
ロ パイプサポートを継いで用いるときは、四以上のボルト又は専用の金具を用いて継ぐこと。
ハ 高さが三・五メートルを超えるときは、前号イに定める措置を講ずること。
八 鋼管枠を支柱として用いるものにあつては、当該鋼管枠の部分について次に定めるところによること。
イ 鋼管枠と鋼管枠との間に交差筋かいを設けること。
ロ 最上層及び五層以内ごとの箇所において、型枠支保工の側面並びに枠面の方向及び交差筋かいの方向における五枠以内ごとの箇所に、水平つなぎを設け、かつ、水平つなぎの変位を防止すること。
ハ 最上層及び五層以内ごとの箇所において、型枠支保工の枠面の方向における両端及び五枠以内ごとの箇所に、交差筋かいの方向に布枠を設けること。
ニ 第六号ロに定める措置を講ずること。
九 組立て鋼柱を支柱として用いるものにあつては、当該組立て鋼柱の部分について次に定めるところによること。
イ 第六号ロに定める措置を講ずること。
ロ 高さが四メートルを超えるときは、高さ四メートル以内ごとに水平つなぎを二方向に設け、かつ、水平つなぎの変異を防止すること。
九の二 H型鋼を支柱として用いるものにあつては、当該H型鋼の部分について第六号ロに定める措置を講ずること。
十 木材を支柱として用いるものにあつては、当該木材の部分について次に定めるところによること。
イ 第六号イに定める措置を講ずること。
ロ 木材を継いで用いるときは、二個以上の添え物を用いて継ぐこと。
ハ はり又は大引きを上端に載せるときは、添え物を用いて、当該上端をはり又は大引きに固定すること。
パイプサポート高さと許容支持力の関係
パイプサポートは高さによって許容支持力(KN)が変わってきます。
高さが高くなると許容支持力は小さくなります。
サポートのメーカーによって多少差があるのでカタログ等で仕様を確認してください。
材端条件 | 水平つなぎあり | 水平つなぎなし | |||
使用高さ(m) | |||||
2以下 | 2~2.5 | 2.5~3 | 3~3.4 | ||
上下端 木材 | 19.6 | 19.6 | 17.6 | 13.7 | 9.8 |
上端 木材 | 19.6 | 19.6 | 18.6 | 16.6 | 14.7 |
下端 コンクリート |
型枠支保工の高さにチッェクポイント
型枠支保工の高さによるチェックポイントをまとめます。
- 型枠支保工の高さが3.5mを超える場合は労働基準監督署の届出が必要。
- 型枠支保工の計画にには有資格者の参画が必要。
- 支保工の種類によって、定められた高さの間隔で水平つなぎが必要