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鉄筋に発生する応力
鉄筋には、曲げ圧縮応力、曲げ引張応力、せん断応力のいずれかが作用します。
そのいずれの応力に対して必要な鉄筋の断面積を算定して、配筋します。
この時、どの部分から鉄筋が応力を負担できるかは鉄筋の定着によります。
鉄筋の定着とは
鉄筋の端部が固定されて、応力を負担できることを定着しているといいます。
鉄筋の定着方法は様々で、部材の形状、他の鉄筋との取り合いなどで方法を変えます。
定着の考え方は配筋方法を決定する上での基礎となるので重要です。
鉄筋とコンクリートの付着
付着とは
鉄筋を組み立てたところに、コンクリートを打設することで一体化させます。
一体化する仕組みとして、鉄筋とコンクリートの付着の考え方があります。
付着とは鉄筋の表面とコンクリートの摩擦のことを指しております。この摩擦(付着)を十分に取ることで、鉄筋を定着させています。
付着を決める要素
異形鉄筋のように、表面がデコボコしている形状だと付着が取りやすくなります。
その他にも、コンクリートの強度が高いと付着が取りやすくなります。一方で、丸鋼の場合は、付着を取りにくくなります。
鉄筋の形状やコンクリートの強度から鉄筋の定着に必要な付着面積を考えます。
鉄筋の基本定着長
定着長
定着長とは鉄筋を定着させるために必要な長さを指します。定着に必要な付着面積から、必要な定着長を算定します。
基本定着長
鉄筋を定着させるために必要な基準となる定着長を基本定着長になります。使用する材料などの条件によりますが、大体鉄筋径の30倍程度になります。
基本定着長は継手の長さ、各種鉄筋の定着長を決める基本となる定着長になります。したがって、この長さは設計協議にてしっかりと定める必要があります。
鉄筋の定着に関する加工形状
鉄筋に必要な定着長は鉄筋端部の形状によって異なります。その考え方は、鉄筋仕様や適用する指針により異なるので注意が必要です。
規定内の寸法の加工形状を計画しても、短すぎたりすると加工不可となる場合があります。少し気になったら、鉄筋の加工場に確認することをおすすめします。
直角フック
直角フックは側壁の内側主筋の定着に用いることが多いです。鉄筋の先端を直角に曲げて定着する方法です。基本的な形は、曲げ内直径が鉄筋径の3倍以上または4倍以上になります。
鉄筋径により負担する応力の大きさが異なるので、必要な長さが変わります。鉄筋の応力が大きい方が必要な定着長は長くなります。
また、折り曲げた端部の直線長は鉄筋径の8倍以上伸ばす必要があります。
鋭角フック
鋭角フックはせん断補強筋の端部に用いられることが多いです。鉄筋の先端を135°曲げて加工して定着させる方法です。
折り曲げ部分の必要な曲げ内半径は直角フックと同じです。
折り曲げた端部の直線長は鉄筋径の6倍以上かつ60mm以上伸ばす必要があります。
加工形状が直角よりも急なので定着が取りやすく、直角フックよりも直線長が短い仕様となります。
半円形フック
半円形フックは、せん断補強筋の端部に用いられることが多いです。
部材寸法に制限があり、直線で定着長が十分に取れない時も使用されます。
折り曲げ部分の必要な曲げ内半径は直角フックと同じです。
折り曲げた端部の直線長は鉄筋径の4倍以上かつ60mm以上伸ばす必要があります。鋭角フックよりもさらに直線長が短い仕様になります。
折り曲げ鉄筋
折り曲げ鉄筋は、主筋の定着によく用いられます。主筋を圧縮域で定着させるために、折り曲げることがあります。
この時の折り曲げ形状は、曲げ半径が鉄筋径の5倍以上とする必要があります。また折り曲げた端部の直線長は鉄筋径の15倍以上必要になります。
定着長の決め方
主筋
主筋の定着長は、どの部分から曲げ抵抗を見込むのかで決まります。
一般的にせん断力による曲げモーメントシフトに配慮して、部材の有効高さを基本定着長に加えて定着長を決定します。
主筋は名前の通り主構造の鉄筋なので、定着には十分配慮して配筋することに注意しましょう。
特に開口部や箱抜き部などの特殊部においては施工含めて慎重な検討が必要です。
配力筋
配力筋の定着長は、基本定着長を満足することが一般的になります。
ただし、側壁の端部は折り曲げて定着させないことが慣用的となっています。
配力筋の役割は主筋の応力を分配させることになりますので、主筋よりはその定着に配慮する必要はありません。
せん断補強筋
せん断補強筋の定着は、端部に直角フック、鋭角フック、半円形フックを用いて定着することが一般的になります。
構造物の耐震性に配慮して、主筋のはらみ出しを防ぐ必要がある場合は、拘束力が最も強い半円形フックを用います。
ただし、両側半円形フックは施行が困難となる場合があるので、機械式定着の適用などを検討する必要があります。