水セメント比とは、コンクリートの材料である水とセメントの割合を表すものです。
水セメント比は、コンクリートの品質にかかわる重要な値です。
この記事では、水セメント比の算出方法、スランプとの関係、単位水量との関係、強度との関係について解説します。
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水セメント比とは?
水セメント比とは、W/Cと表記され、コンクリートの材料である水とセメントの割合を表すもの。
Wは(Water)、Cは(Cement)の頭文字です。
水セメント比の値はコンクリートの強度や耐久性などの品質に大きく影響を与えます。
水セメント比は小さい方が良い
水セメント比は一般的に小さい方が望ましいとされます。
しかし、水セメント比が小さすぎるとワーカビリティーが低下してしまいます。
「強度を出すために極力水セメント比は小さくしたい」
と言う場合にはAE減水材などの混和剤を使用することでワーカビリティーの低下を防ぐことが可能です。
水セメント比の算出方法
水セメント比の算出方法は「水セメント比=W/C×100(%)」
例:単位水量180㎏/㎥、単位セメント量300㎏/㎥の時の水セメント比は何%か。
式:(180/300)×100=60%となる。
土木学会(コンクリート標準示方書)の規定で、普通ポルトランドセメントの水セメント比の最大値は65%なので、上記の水セメント比は基準をクリアしていることになります。
水セメント比の最大値
各セメントにおける水セメント比の最大値は下記の通り。
(短期・標準・長期) | (超長期) | |
早強ポルトランドセメント | 65% | 55% |
普通ポルトランド | 65% | 55% |
中庸熱ポルトランドセメント | 65% | 55% |
高炉セメントA種 | 65% | ー |
フライアッシュセメントA種 | 65% | ー |
シリカセメントA種 | 65% | ー |
低熱ポルトランドセメント | 60% | 55% |
高炉セメントB種 | 60% | ー |
フライアッシュセメントB種 | 60% | ー |
シリカセメントB種 | 60% | ー |
※基本的には建物の耐久期間年数が超長期になると水セメント比はより小さな値で規定されています。
水セメントと単位水量との関係性
コンクリートの強度を上げるために、水セメント比は小さい方が理想的です。
単位水量を減らす➡水セメント比は小さくなり、ワーカビリティーが低下する。
単位水量を多くする➡水分が多くなることで乾燥収縮やひび割れが発生する恐れがある。
JASS5では単位水量を185㎏/㎥以下とし、品質が得られる範囲でできるだけ小さくすべきと表記されています。
ワーカビリティーを確保したい場合
水セメント比を基準値以内に収めつつ、ワーカビリティーを確保したい時にはAE剤や減水剤を活用する必要があります。
AE剤とは?
コンクリート中に空気泡を混入することでワーカビリティーを確保するもの。
減水剤とは?
通常セメント粒子は互いに凝集し、ごく微小なかたまりとなり、セメントペースト中に存在するもの。
減水剤を使用することで、凝集状態であるセメントの界面にくっつき、静電気のような反発作用によりセメントペーストの流動性が大きくなることでワーカビリティーを確保します。
水セメント比とスランプとの関係性
と考えてしまいそうですが、
スランプは水セメント比を大きくすることで調整することはありません。
基本的にスランプは細骨材率(s/a)を増減することでスランプの設定が決まります。
細骨材率を変えずに単位水量のみでスランプを調整するとシャバシャバ、もしくはバサバサしたコンクリートになってしまいます。
また、同じスランプでもワーカビリティーの良し悪しがあるのは細骨材率が影響しているからです。
水セメント比とコンクリート強度との関係性
- 水セメント比が大きいと圧縮強度は小さい。
- 水セメント比が小さいと圧縮強度は大きい。
圧縮強度は水セメント比に比例します。
水セメント比の基準値
コンクリートの品質やワーカビリティを確保するために、JASS5や標準仕様書において、水セメント比の上限値が定められています。
現場で配合を決定する際には、標準仕様書以外に特記仕様書の記述を確認して、水セメント比の基準をコンクリートプラントと協議して配合を決定します。
セメント水比との違い
セメント水比とは、水セメント比の逆数です。
セメント水比=C/W(%)
基本的には水セメント比をおさえておけば、コンクリートの品質管理では問題ありません。
水セメント比の確認事項
現場を管理する際の、水セメント比について確認する事項があります。
- 設計図書の仕様書に水セメント比の規定の有無を確認します。
- 上記を基にコンクリート配合計画書の水セメント比が仕様書の規定を満たしているか確認します。
まとめ
水セメント比がコンクリートの品質に大きく影響することはご理解いただけましたか?
現代では混和剤の発達で高性能AE減水剤も開発され、ワーカビリティーを確保した上で、より強度の高いコンクリートの製造も可能になってきました。
コンクリートは水セメント比のみならず、様々な要因で強度や耐久性に影響します。