構造力学 用語の解説 鉄筋コンクリート造

【鉄筋の降伏とは?】降伏点の意味や計算方法、設計モデル例を分かりやすく解説!

2022年11月15日

鉄筋の降伏とは?

鉄筋の降伏とは、鉄筋に力が加えられた際に変形が生じて、元の形に戻らなくなることです。

降伏

降伏とは、塑性変形が生じて物体が元に戻らなくなることです。

降伏点とは、物体に塑性変形が生じる点のことを言います。このことから塑性化するという表現を用いることもあります。

降伏すると、物体の剛性が変化するので、力に対する変形量が変わります。材料の特性は様々なので、適切な特性を設定することに注意しましょう。

弾性体

ある物体に力を作用させると変形します。力を作用させることをやめた時に、元の形に戻る物体が弾性体になります。

例えば、輪ゴムを伸ばした後に、輪ゴムは元に戻ります。

しかし、ある一定の力を超えると弾性体ではなくなり、元に戻らなくなります。

鉄筋の降伏点

鉄筋の降伏点とは、鉄筋が降伏する時の強度のことをいいます。

鉄筋の規格と降伏点

鉄筋の規格は、以下の表の種類があります。

それぞれの数字が示しているのは降伏点の応力になります。

荷重が作用して鉄筋に降伏点の応力が発生したら、鉄筋は降伏し剛性が低下します。

一般的にはSD345を使用しますが、地震時に厳しい部材などにはSD490など鉄筋の降伏応力が大きい材料を適用する場合があります。

鉄筋の材質はどのように製作するかで変わってくるので、当然コストは降伏強度が高い方が高くなります。

高強度鉄筋を適用する場合はその他に設計上注意する点があるので注意しましょう。

鉄筋の非線形特性

鉄筋の非線形特性は下図に示す応力ひずみの関係のトリリニアモデルとすることが基本になります。

1段階目の変化点はコンクリートの端部にひび割れが発生する段階になります。

この状態になるときの発生曲げモーメントをひび割れ曲げモーメントと言います。

2段階目の変化点は鉄筋が降伏する段階になります。

この変化点における発生曲げモーメントで鉄筋の引張応力は降伏点を超えています。

降伏後、鋼材は終局状態まで低い剛性で応力を負担します。

弾性体の時に負担していた応力に比べると降伏時の増加応力は小さくなります。

したがって、線形モデルと非線形モデルの構造解析では各部材に発生する断面力が異なります。

降伏した部分が負担していた断面力がその周辺に伝達するようになります。

線形特性と非線形特性

線形特性

線形特性とは物体の変形に応じて剛性が変化しない特性になります。

線形モデルは大きな力が作用しても変形に対する剛性が一定なので、応力を過大評価してしまう場合があります。

物体は基本的に非線形特性を持ちますが、簡易的な検討やそこまで大きな荷重をさせない検討などで用いられます。

非線形特性

非線形特性とは物体の変形に応じて、剛性を変化させる特性になります。

その変化が1段階の場合、バイリニアモデルといいます。

2段階の場合はトリリニアモデルといいます。非線形特性は材料によって様々で、特に地盤の非線形特性は特殊な特性になります。

耐震設計など大きな荷重を作用させる検討で用いられます。

大きな荷重が作用して、部材が塑性化すると部材は弾性体の時よりも応力を負担しなくなります。

この特性をモデル化して、合理的な設計を実現しております。

設計モデル例

非線形特性を考慮した設計について少しモデル例を紹介させていただきます。

ボックスカルバートの耐震設計を事例に紹介いたします。

鉄筋コンクリートのモデル

常時設計で決定した主筋、せん断補強筋から鉄筋コンクリート断面の非線形特性を算定します。

定義するのは曲げ剛性の非線形特性になります。

曲げ抵抗の非線形特性については、主筋およびせん断補強筋の仕様で決定します。

せん断補強筋による主筋の拘束効果を見込む場合は、鉄筋形状を両側半円形フックとする必要があります。

直角フックや鋭角フックでは主筋の拘束効果が不十分なので、主筋の仕様のみで非線形特性を設定します。

両側半円形フックは施工が難しい場合が多いので、半円形フックと同等の性能を持つ機械式定着工法を採用することがあります。

要求性能

要求性能は、構造物の重要性や企業者毎に変わります。

地震動は基本的にレベル1地震動、レベル2地震動を入力として耐震設計を行います。

それぞれの地震動に対する構造物の耐久性は協議の上決定しましょう。

照査項目

鉄筋の非線形特性が主に関わる照査項目としては、曲率の照査になります。

常時設計では鉄筋コンクリートは弾性体として、許容応力度法で設計することが一般的です。

耐震設計では、非線形特性をモデル化してその変形を照査することが一般的になります。

その理由としては、降伏後に負担する増加応力は小さいため、曲率の方が評価しやすいからです。

各地震動に対して、曲率をどの程度発生させて良いかは上記の要求性能の項目で定義して設計します。

設計上NGとなった箇所は、主筋をランクアップするかせん断補強筋をランクアップすれば補強できます。

一般的には経済性の観点からせん断補強筋をランクアップさせます。

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