「尺(しゃく)」とは、わが国を含む東アジアで伝統的に使われてきた「長さの単位系」の一つ。
この記事では、1尺の意味や尺貫法、メートル法との関係、使われ方について解説します。
「尺」の意味
「尺(しゃく)」とは、わが国を含む東アジアで伝統的に使われてきた「長さの単位系」の一つです。
長さを含め、面積、体積、重さ(質量)を示すこれらの単位の体系は「尺貫法(しゃっかんほう)」と呼ばれ、尺の単位系はこの尺貫法の体系のもとで使用されてきました。
尺の単位系について、「1尺」を基準にその大と小をあげると次のとおりです。
1尺より大 ― 1間(けん)・・・・・1尺の6倍
1丈(じょう)・・・ 1尺の10倍
1町(ちょう)・・・ 1間の60倍
1尺より小 ― 1寸(すん)・・・・・ 1尺の1/10
1分(ぶ)・・・・・・・ 1寸の1/10
尺の単位系は、地域や時代によって単位となる長さが異なってきました。また使われる目的によって別々の単位系が使われることもありました。
わが国では「尺」と言えば通常「曲尺(かねじゃく)」を指しますが、和装の布を測るような場合は、曲尺の1.25倍の長さを単位とする「鯨尺(くじらじゃく)」が使われてきました。
尺貫法とは
長さの単位系である「尺」を含む体系の「尺貫法」とは、中国を起源として、わが国や東アジア一帯で古来より用いられてきた度量衡(どりょうこう/長さ、面積、体積、重さ(質量)の単位体系、並びに定められた慣習や制度)を指します。
但し、重さ(質量)の単位を基本の「貫」とするものはわが国独自のものといわれ、したがって尺貫法といった呼称は、狭い意味ではわが国固有の単位系のみを指すものとされます。
ちなみに中国固有の体系は尺貫法とはいわず「尺斤法」といいます。
わが国では、明治以降もメートル法と併せて尺貫法が使用されてきましたが、計量法によって、1958年の12月末日(土地と建物の計量については1966年の3月末日)を限りに、尺貫法を取引や証明に用いることは禁止され、以後、国際単位系であるメートル法に統一されています。
一方、計量法に違反しない取引や証明にあたらない計量においては、尺貫法の値を設計上の思考や内部的な計算に用いることなど、慣習として今でも根強く残っています。
ただし、取引や証明にあたって使われることはなくなっています。
「尺」とメートル法
「尺」を基本とする長さの単位系は、度量衡法(1891年)で「1間=6尺」と定義され、さらにはメートル条約に加盟した際の計量法施行令(1951年)によって「1尺=10/33 m」と定められました。
この尺の単位系でよく使われる単位をメートル法の長さに換算したものは次のとおりです。
1間 (6尺) ≒ 1.8182m
1尺 = 10/33m ≒ 30.303cm
1寸 (1/10 尺) ≒ 3.0303cm
1歩 (1/10 寸) ≒ 0.30303cm
尺の使われ方
尺の単位系は、計量法によって取引や証明には使用を禁止されていますが、例えば次のような場面では今でも使われています。
➀ 建築関連
木造住宅などでは、今でも3尺(910cm)を基本的な寸法として設計、建設されています。
また合板やボード類などの板材には、3×6(さぶろく)や4×8(よんぱち)などと呼ばれる規格品が製造、使用されていますが、これらは尺の単位系による縦×横の長さの値で呼称するものです。
➁ 釣り用語
釣りの用語では、釣り竿の長さや釣れた魚の大きさを示す時に、尺の単位系がよく使われます。
③ 和装反物
和装の反物の幅や長さを示すとき、鯨尺(1尺=曲尺の1.25倍)を使って呼称することがあります。