コンクリートの品質検査の一つに『スランプ試験』があります。
スランプ試験は、コンクリートの打設前に行う受入検査で必ず実施するとても重要な試験です。
スランプ試験の目的は、
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施工性(ワーカビリティ)
-
コンクリートの状態(材料分離や単位水量
を確認することです。
今回は、スランプ試験の目的と詳細について説明します。
スランプ試験の目的?
スランプ試験は品質検査の一つであると説明しましたが、具体的には
コンクリートの
-
施工性(ワーカビリティ)
-
コンクリートの状態(材料分離や単位水量)
を確認することが目的です。
ワーカビリティーとは、コンクリート工事の施工においての運搬・打込み・締固め・仕上げなどの施工・作業の容易さを示す用語です。
ワーカビリティーが良い
→施工・作業が容易
ワーカビリティーが悪い
→施工・作業がしにくい
と言うことができます。
粘性が強く、スランプの小さいコンクリートは、作業性も悪く、型枠や鉄筋のすき間に入りづらくなってしまいます。
このようにコンクリートが型枠や鉄筋の全体に行き渡らないと、スカスカで品質のとても悪い躯体になってしまいます。
だからといって、単位水量を大きくしてスランプの大きいコンクリートを使用すると、ワーカビリティは向上しますが、コンクリート自体の品質は悪くなります。
単位水量の多いコンクリートは、セメントに対して水の量が多くなり、材料分離を起こしやすく、また、乾燥収縮によるひび割れの原因にもなります。
このようにスランプの扱いというのはとても難しく、
『作業に影響の無い範囲で、できるだけ小さくする』
のが良いとされています。
長くなりましたが、スランプ試験の目的とは
- 施工性(ワーカビリティ)
- コンクリートの状態
を確認する事で、品質の良いコンクリートを見極めるために実施するものです。
スランプ試験方法の概要
スランプ試験の目的について説明しましたが、次にコンクリートのスランプはどのように確認するのか説明していきます。
スランプ試験に使用する道具には
- スランプコーン
- 突き棒
- 検尺
- 台座
があります。
これらの道具と、工事現場に搬入された生コンクリートを用いてスランプ試験を行います。
<スランプ試験の概要>
1.台座の上に置いた円筒形状のスランプコーンに生コンクリートを入れます。
2.スランプコーンをゆっくりと上に引き抜きます。
3.スランプコーンを引き抜いた後のコンクリートに対して、スランプコーン上端からの距離を測定します。この距離の値がスランプ値です。
スランプコーンを引き抜いた時に、
粘性の低いコンクリートは、形を保ちにくく横に広がり、高さも下がり、スランプコーン上端からの距離が大きくなります。
→スランプが大きい
粘性があり、流動性が低いコンクリートは、スランプコーンを引き抜いた後も形を保ち、高さも下がりにくく、スランプコーン上端からの距離が小さくなります。
→スランプが小さい
ということになります。
このスランプ値が仕様書や設計図に規定されたものの基準を満たせば合格ということになります。
スランプ試験方法と注意点
スランプ試験の概要については、上記で説明しましたが、スランプ試験にはJISに規定された正しい方法があります。
正しい方法で行われければ、間違ったスランプ値となり、コンクリートの品質に影響しますので試験方法についても要点を押さえておく必要があります。
- スランプコーンやその他工具ににコンクリートの付着等が無いように、布等で拭き取ります。
2.内面台座は水平なところに、水準器を用いて水平に設置します。
3.生コンクリートはほぼ等しく、3層に分けてスランプコーンに詰めます。その際に、各層ごとに突き棒で25回突きながらならしていきます。
突き棒を入れる深さは前の層に到達する程度とします。
4.スランプコーンが満タンになるまで詰めた後、スランプコーンの上端に合わせてきれいにならします。
5.スランプコーンを静かに垂直に引き上げます。この時引き上げる速さは、遅くても、早くてもいけません。2〜3秒程度で引き上げます。
6.コンクリートの中央部において、検尺を用いてスランプ値を0.5cm単位で計測します。
7.1-5の手順は3分以内で行うようにします。
スランプ試験の失敗とは?
スランプ試験の正しい方法について解説しましたが、スランプ試験にも失敗というものがあります。
失敗の定義はJISに解説されていますが、
コンクリートの形状が不均一になったり、中心に対して偏ったりする場合は失敗となります。
その判断は、
- スランプ値の最も大きい部分と小さい部分の差が3cm以上
- スランプコーンの中心部と引き抜いた後のコンクリートの中央部との距離が5cm以上
の場合には再試験を行うようにします。
スランプ試験の許容範囲
スランプ試験は0.5cm単位で測定すると説明しましたが、設計図や仕様書の基準と全く同じ通りのスランプ
を出すことはもちろん難しいため、許容範囲が定められています。
一般的なコンクリートでは、
スランプ値8-18の定められた値に対して±2.5cmと規定されています。
規定されているスランプ値によって、許容範囲も変わってきますので、以下にまとめます。
スランプ試験のJIS規定
スランプ試験については以下のJISに規定がありますので、必要な場合は確認する事ができます。
JIS A 1101『コンクリートのスランプ試験の方法』
JIS A5308『レディミクストコンクリート』
まとめ
今回は『スランプ試験』についてまとめました。
スランプ試験は、基本的な試験ではありますが、コンクリート工事とスランプ試験は品質および施工性において密接に関係しています。
現場管理者は、
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スランプとは何か?
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スランプの正しい試験方法とは何か?
について要点を押さえておく必要があります。